職探し中の知人へ

かれこれ半年近く職探しをしている知人女性がいる。

外資系自動車関連の会社で事務をやっていたその知人は、仕事の一部として社内マニュアルや技術ドキュメント系の翻訳(英日)もやっていたようで、在宅翻訳者としての仕事に興味があったみたい。で、一応フリーでやってる自分のとこにも色々聞きに来た。まあこの仕事してると、「在宅フリーだと自分の決めた時間内で仕事ができて楽そう」とか「通勤がないのは楽そう」とか「会社員より楽そう」とか「変な人間関係がなさそうで楽そう」とか、とにかく「楽そう」と言われることが多い。どんな仕事にも「楽な」仕事なんてないんだけど。まあそういう事言われるのはもう慣れてますけどね。

件の知人女性も、在宅フリーで翻訳=自分で仕事量・仕事時間をコントロールしてお仕事できるかも、なんて思っていたようにこっちには思えたので(プラス、憧れとかステータス性なんかも)、とりあえず経験による現実的な回答をさせてもらった。でもこの手の話は、フリーで翻訳やっている人にとってすればもう基本中の基本部分(人によってはうんざりする内容)だったりする。なので、実に初歩中の初歩的な内容なんだけど。で、まあ質問っていうか、ざっくりと「在宅翻訳者ってどんな感じ?仕事とかどうやって取っていけばいい?仕事が集中しちゃったらどうするの?苦手・未経験な分野のしごとが来たらどうするの?」みたいなことを聞かれたので、とりあえずこっちもざっくりと自然に自分の経験も踏まえて下記のように答えていった。あまり益のある内容でもないので恐縮だけど、思い出したら追記していくかも。まあ読み流すかここで読むのやめても全然OK。

どんな感じ?ってことについて
とりあえずざっくりしすぎててどんなも何もないんだけど、「楽なの?」っていうことに対してであれば、まあ大変ですよ。会社員の延長のような雰囲気で捉えることはできないし、憧れだけでやっていけるほど甘いもんじゃないし。「自己責任」て言葉を思い知らされるし。お客(ソースクライアント及び翻訳会社)の設定した納期最優先のスケジュールになるし。好きな時に好きな量の仕事、なんてどこぞの怪しげな在宅ワークの釣り文句みたいな甘っちょろいことを1ナノメートルでも考えてるんだったらやめた方がいい。無理。その前にそういう考え方してる人に仕事なんて来ないし取ってもこれない。なのでやめましょう。終了。

それと毎月収入が決まっている会社員と違い、フリーの場合は毎月定額の収入があるとは限らない。仕事を受けた分だけ収入になるので、休み・休暇は基本的にはノー報酬。だから断らないといけないほど仕事が入ってきたり回りだしたりしない最初の数カ月から数年(この時期は人それぞれの背景と経験によると思う)は、別の収入手段を講じる必要ありかも。そうする必要のない人もいるでしょうけど、もちろん。まあでも切羽詰まったほうがいいんじゃないかと結果的には思うんですけど、またこの話は別でってことで。あ、それと国保に年金、とか税申告とかも全部自分でやるっす。肩代わりなしっす。

仕事とかどうやって取っていけばいい?
これもよく聞かれる。率直に言うと、こういうこと聞いているようではどうなのかなと思わざるをえない。まずは自分で調べないと。翻訳を仕事という枠内でやったことがあるなら、調べ物がどれだけ大切かっていうのもわかっているはずだとは思うんだけど。まあ「ググレカス!」なんて言いませんけど、まずはとにかく自分で調べましょうよということ。翻訳仕事してる時にその分野でわからないこととかあった場合、人に聞かないよね、いきなり最初から。教えて君スタンスでは仕事は取れない。教えて君スタンスって、自分自身できっちり物事を理解しようという姿勢を捨てている、って思えてならないので。まあでもね、「だって人に聞いたほうが早いじゃん」って言われることもある。
聞かれる方の身にもなれっていうんだよバカ。

翻訳の仕事を在宅でやろうと思ったら、翻訳会社との付き合いはとても重要なファクターとなる。翻訳会社なんてのは星の数ほどあるから、片っ端から自分の履歴書や職務経歴書をメールで送ってみればいいのではないかと。で、そこから何かしらのアクションが起きた会社、例えばトライアル送ってきたり、過去の実績が欲しいって言われたりしたところに対応していくっていう順序が一般的なような気がする(他の仕事ルートがすでに確保されている場合はこれに限らず)。大抵の場合、思ったより会社からのレスポンスやトライアルって来なかったりするし、トライアルが来たとしてもこっちから返送したあとの合否通知までの時間はまばらだったりする。まあでもこの一連のプロセスは、翻訳者と翻訳会社の「お見合い」みたいなものなので、気長に根気よくテンポよくやっていったほうがいいんじゃないかと思ってる。メールのやりとりだけでもいろいろわかったりするもんだし。とにかく自分で色々判断して動くことが大切かなと。それでもまあ時間ないとか、なんか億劫とか、ちょっと怖いとか、いろいろ思ったりもするかもしれませんが、第一歩目ってのは誰にとっても大変なもんです。とにかく一歩踏み出さないと。Don’t give up, the beginning is always the hardest partってことで。一歩踏み出してしまえばそこからまた別の世界が広がるし、どうせ別の壁にもぶち当たるので、さっさと一歩前に出ちゃえばいいと思う。え?翻訳会社はどう探したらいいのって?教えて君からの脱却の一歩を踏み出してください。

語学レベルに関しても聞かれた。てかどのくらいのレベルが必要?っていう意味だったのかもしれないけど、「これぐらいのレベルがあれば仕事ができる!」という考え方は、超初心者でない限り(であっても)持たないほうがいいと思ってる、個人的には。自分の想定しているレベルに到達すれば何とかなる、みたいな安心感があると、そのレベルに到達した(と自分が思った)時に成長がストップしてしまうのではないかと思ってるので。それと、英検1級持ってるとかTOEIC980点持ってるとか、特に何の意味も持たないしこの仕事には。シンプルに考えて、仕事がうまい人は次も来る。ダメだったら来ない。そして「仕事がうまい」っていうのは、翻訳技術だけに限らないはず。営業やマーケティングの知識、リサーチ力、ビジネスマナー。語学プラスいろんな知識・知恵が必要。全部大事。総合力勝負。ううう。ずーっとずーっと常に勉強。

仕事が集中しちゃったらどうするの?苦手・未経験な分野のしごとが来たらどうするの?
個人差もあると思うけど、駆け出しもしくは初心者の翻訳者が翻訳会社とかにコンタクトし始めて、最初の一、二ヶ月でもう仕事が集中してしまってどうにもこうにも首が回らないなんていう状況はそうさらさら生じるもんではない…と思うんですけどどうかなー。トライアルに合格しても、そこから必ず仕事が来るという保証はないし、登録にこぎつけたとしても一回こっきりの仕事が来ただけであとはずっと放置というケースもよくあるので。あ、でもこのケースでは、その最初の仕事がちょっとアレだったかもしくはその会社の求めるものとズレていたという事も考えられるけど。だからそういう意味では、本当のトライアルって最初の仕事、っていう意味合いはあると思ってる。トライアルにだけ本気以上の力出して、普段の仕事が疎かになってしまったんでは何の意味もない。むしろ、トライアル以上の仕事であったほうがいいわけで。ちょっと話がずれた。

で、仕事が集中しちゃったらどうするの、について。個人的なスタンスとしては、とにかく来た仕事は難しそうに思えてもとりあえず受ける、そしてファイルを開けてからジタバタするということで。さっきも書いたけど、そうやって切羽詰らせて行かないと本気でやっていけなかった面もあるので、自分的にはそのスタンスでやって来ました。いろんな修羅場を経験した。同時にたくさんのことも学んだ。打たれ強さと謙虚さ、学ぶことに対する貪欲さ、過信ではない自信。でも毎日、勉強。なので幸運にも依頼が来たのなら、全部受けるつもりでガンガンやって行けーと思う。仕事が来るのはチャンスなわけだし(見定めないといけないこともありますが)。まあでも自分なので、決めるのは。はい。とはいえ仕事が集中したら、冷静に自分の能力と相談して一連のスケジュールを組み立てて(割り込み用にマージン残しつつ)頑張る。そして頑張る。それしか。状況によっては涙をのんでごめんなさい、とお断りもあるかと思うが。

あと打たれ強さが必要なのと、SNS等が発達して横のつながりが出てきたとはいえ、基本孤独(結構心地良い)。自分との戦い、っていうのと、天狗になったらおしまい。鼻を折られておしまい。でも鼻を折ってくれる人がいたら感謝だけど。

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