翻訳祭(3)

翻訳最備忘録メモ、その3。

セッション4:「等価である」とは?英訳で考えてみよう

一応日英翻訳者なので、数々のライティングや英訳関連書籍を出しておられる遠田和子さんのこのセッションには大変興味があった。この業界に入りたての頃を思い出して、その頃の気持ちになって聴講した。というわけで、メモから。

原文に忠実とは?原文と等価とは?意味をきちんと訳せているか。意味を文脈で正しく判断しているか。例えば、日本語で「足」と言っても、文脈によってpaw(猫), tenticles(蛸), trotters(豚)と変わっていく。意味を決めるのは文脈である。

日本語、英語、米語、ハイコンテクストの順に並べると?

日本語
英語
米語

の順になる。ハイコンテクスト=文字に表す必要のない・文字に出ていないファクターが多い。

「古池や かわづ 飛び込む 水の音」を英訳すると…

小泉八雲:Old pond, frogs jumped in sound of water.

Donald Keene: The ancient pond, a frog leaps in the sound of the water.

ここで、カエルは何匹?日本語=一匹。英語…八雲は複数、キーンは一匹(+冠詞)。冠詞あるなしの違い=ないほうがエキゾチック(あるとくっきりと情景が浮かぶ気が…筆者追記)。

単数複数の概念といえば、安部公房の脚本を英訳する際に「象」が出てきた。英訳者のリービ英雄氏が、「この象は一頭ですか?二頭?それとも群れですか?」と尋ねると、公房は「日本人にそんな区別はない、わからないから自分で決めて」と。英語では必ず単数か複数かを区別するので困ったと。

英訳の際、原文内で著者の意図や省かれた言葉を適宜追加していく必要がある。読者の視点を常に考慮する必要がある。特に日本文化のものを説明する文章の際に必要となる。掛詞(ダジャレ)や俳句、方言なども適宜工夫して訳していく必要がある。

日本の文化(言語)はハイコンテクストであり、多分に著者の意図や言葉、説明が省かれていることがある。コンテクスト(文脈)から適宜それらを理解し、意味を伝えることが必要。センテンスレベルではNMTがある程度ナチュラルに約せるようになってきてはいるが、ドキュメントレベルでコンテクストを理解しながら意味を訳すのは人間に分がある。

感想として、文脈がいかに大切か、文脈に隠された意味をいかにして拾い上げて訳すか。その旅は難しくもあり楽しくもあり、発見に満ちていて、我々翻訳者を魅了する…と、ちょっとカッコつけちゃってるけどそういうことを感じた。センテンスレベルでぶつ切りに翻訳…と聞くと、CATツールを使った翻訳が思い浮かぶけど、そういったツールを使っていたとしても文脈をきちんと意識しない限り質の良い翻訳は生まれない。そうなると、CATツールってセグメントで強制的にぶつ切りにされるので、翻訳作業しづらいのだろうな…と思う。かくいう自分もTRADOSやMemsourceとか使用するけど、自分独自の使い方を確立させて使わないとダメだろうな、と。

文脈を意識すること。それは「原文をいかに読み込むか」につながっていく。やはり「読み」が大切なのは言うまでもない。

というわけで今回の翻訳祭、基本に忠実であれ、ということを改めて確認する機会になった。かつ、そこからこれからの自分の進む道をどう切り開いていくかというところに駒を進めたいと思う。AIやMT、NMTがどんどん普及していくこれからの世の中で、自分の翻訳がどんな差別化を図ることができるのか。どこに価値を付加するのか。自分はどこに注力し、どこをどう歩いていくか。何を学び、蓄積するか。

課題が尽きることはない。

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