翻訳祭(2)

翻訳祭の備忘録エントリー、その2。

セッション2:機械翻訳時代のサバイバル戦略

プレゼンターは、井口富美子さん(個人翻訳者)、梅田智弘さん(TPJ社長)、加藤泰さん(TPJ副社長)、そして成田崇宏さん(ホンヤク社翻訳事業部事業部長)。

旬なタイトルなためか、めちゃめちゃ人が入ってた。サテライト会場でも立ち見が。そしてお隣に座っていた方は、セッション「ニューラル機械翻訳の最前線」中澤先生だった。ていうかそのセッションも行きたかったんですよ…品質の方のセッションに最終的に行ったので行けなかった。行きたかったわー。とりあえず以下、メモを中心に。

まず梅田さん。

前回やったイベントの振り返り。機械翻訳(以後「MT」)導入は、企業は前向き、翻訳者は後ろ向き。ポストエディット(以後「PE」)の質としては、人力翻訳と同じレベルがフルエディットで、メジャーなエラーがあまりなく、意味がわかるというレベルがライトエディット。そもそも人力翻訳と同じレベルをMTに求めるってのは無理では?MTを導入する事自体は、企業も翻訳者も前向き。翻訳がコスト削減のターゲットとなっていくと、PEの依頼増加?PEのディスカウント率=20%。PEを主にやっているのは、中堅翻訳者(42.4%)、ベテラン翻訳者(21.2%)、そしてチェッカー(定義による)。

井口さん。

コスト削減の圧力は必至…社内文書は社内でMTベースで処理、社外文書は人間に。MTベースのPE系案件、駆け出しは手を出してしまうだろう。が、MTの使用は結局翻訳会社側もコスト下げになってしまい、淘汰が進む可能性が。実務翻訳者として、MTについては、使う・使わないは自分次第だろう。現状のMTを使用した翻訳プロセスでは、訳出する部分をすべてMTのブラックボックスに丸投げなのでそこが厳しい(これ同感!)。今ある仕事はなくなるのか?現在自分がやっている仕事は、MTには大変キツイ。常にリサーチを頑張る(良い翻訳会社)。今も昔も優秀な翻訳者は少ない。自分が優秀になるしか無い。

成田さん。

今後の世の中として、MTはどんどん上がっていく(市場に出てくる)、コスト下げ圧力もより激化、翻訳におけるクリエイティビティは下がる、そして納期に対する要求は厳しくなる。わかっていないクライアント、できるという企業、無理に受けてやってしまうPE担当、と3つ揃うとにっちもさっちもいかない。きちんとしたビジネスモデルが必要となる。サステイナブルなサービスとして、新市場を作っていく。翻訳会社としては、教育が必要となる、MT+PEの売り方に気をつける。サバイバル戦略としては、ベテランは逃げ切れ!機械の武器・人間の武器を理解し追求する。新人さん駆け出しさん、PEやれば良いと思うよ?市場もアガってるし。ただし、付き合う会社は慎重に選ぶべし。料金・納期交渉はしっかりと。

加藤さん。

東京では吉野家のバイト時給が1200円。果たしてその時給、自分の時給と比べると…?今後は「翻訳=投資」と考えることのできるクライアント企業を開拓、それが理解できていない企業は(こちら側からは)淘汰されるだろうと予測。残り1%の翻訳者となれるか。フリーターになり下がるか、それともプロのフリーランスとなれるか。専門性、チーム、複業の三本柱。働き方改革。マルチプロフェッションという複業も一つの考え方としてあるのではないか。

感想として。

まず現状自分のMTに対する立ち位置はすでに決まっている。大意を得ることを目的とした使い方、である。とりあえずどんなこと言ってんのかなこのドキュメント、っていうときに使用する。なぜ翻訳作業には使わないか。簡単だ、MTにしろニューラル翻訳にしろ、訳すプロセスはブラックボックスだからだ。見えないしわからない。特にニューラル翻訳は微妙な間違いを入れ込んでくるんだけど、それを認識するには、結局最初から自分が翻訳に近い作業を行わなければならなくなる。

だからPEもやりたくはない。だって疲れるもん。ていうか、もうすでに機械と人間といろいろ存在する中で仕事をしてきたのである。 Twitterで話した翻訳者が言っていた言葉が印象的だった。「今更騒いだところで、質の上がらないMTもさっさと淘汰されるし、業界の人間がPEを否定できないのも、ですよね、としか言えないしね。」まったくもって同感である。

それと、この世の中の九割は翻訳の何たるかを知っていない。それらの人たちを騙すには全然問題ないんですよ、MTは。そして実務者として、PEばかりしていたら、翻訳力はきっちりと落ちていくのも否めないと思っている。原文入れてボタン押して訳文が出てくる、そして出てきた訳文を見つめてばかりいても、訳出の作業をやらない限りは、翻訳力はつかないだろう。なので、そういう意味でも、より一層PE業務はやりたくなくなるのである。駆け出しや新人にPE業務をやらせるのであれば、結局はMTの出力以上の訳文が構築できないダメ翻訳者が出来上がるのだろうな、と思う。が、最初からPE専門でやっていくのであれば、それはそれで良いのかなとも思う。となると、翻訳者=PEと見てはいけなくなるわけで、個人的にはこれからきちんとこの二者を分けて考えていかないとと思っている。っていうかさ、PEの仕事は翻訳者にやらせちゃいけないんだろうな。

そもそも、MTが得意とする分野にはどんどんMTを活用していっていいのではとも思っている。そういうところで稼いでいた翻訳者たちは鞍替えなりなんなりもうしていっていると思うし、それが一つの流れだろうっていう。だからMTのこともきちんと勉強していったほうがいいのではないかな…とも思うのである。積極的に勉強していかねば。ただこないだの浜松の誤訳メール問題じゃないけど、ちゃんとチェックはしようよと思う。人だろうと機械だろうと、内容をきちんと確認してチェックするのは品質の部分で当然のプロセスであり、ましてや人の命が関わるってことになるのであれば、なおのこと必要だろう。そういうところにきちんとお金かけましょうよ。

マルチプロフェッションについては、実は今、似たような立場になっている。インカムソースを複数に持つというのは、フリーランスとして基本戦略になるけれど、業種の異なる仕事を複数やるのは結構たいへんで…。今後に活かすためと思って今の所続けてはいるが。この辺、結局本業で生きていくことを目指して、そこへ注力したほうがいいのかもと感じてきているのも事実。だけど、まだまだ色々試す価値は大いにあると思っている。

というわけで自分としては、MT導入・活用というのはもう大きな流れなので、それを否定しても無意味であると考えている。自分の歩む道をきちんと見据え、ジタバタせずに流れを見極めつつ現状をきちんと認識し、やれることをやりながら少しでも自分の質を上げていく努力を怠らず、という感じでやっていこうと思った。

セッション3は出たいのがあったんだけど、なんか人酔いしてしまい、休んでました。もぐらさん、珈琲ごちそうさまでした。

続く。

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