まじめに遊ぶ(今週の一曲)

日本語って面白くて、「バカ」っていう言葉があるけどさ。

「バカ」って言葉、ケンカの時に使えば相手をけなす、または罵倒する言葉になる。でも同じケンカでもカップルのケンカに使われると(しかも彼女が彼氏の胸を叩きながら連発すると)、「バカ」がなぜか「どうしてなの」とか「待ってたんだから」とか、果ては「好きなの」に聞こえてくるから不思議。
逆に、何かに突出した技術や技能を持っていたり、知識を持っている人に使えば(「あいつは**バカだよな、すごいわマジ」みたく)褒め言葉にもなるし。あと、笑いながら「あいつはほんとにバカだよなあ」っていうと、親しみを込めた友達感覚が生まれてくるような気がするし、まあ「バカ」というのはなんとも不思議な言葉だと思っている。

まじめに遊ぶことも「バカ」と共通していると思う。バカやってる、っていう表現はなかなか好きな部類に入る。バカやるのは、くだらないことを真面目に、突き詰めてやっていくっていうことだと思っている。こないだそういうバカをやってみた。

うちの奥さんには小学生の英語の生徒が一人だけいて、独身の頃から教えてるから結構長い生徒さんなんだけど、その子が何か原稿用紙に自作の小説を書いたらしい。その小説を英訳してみたいと言っていたというのを聞いたので、すごい軽い気持ちで「ふーん、持ってきてくれれば適当に英訳しちゃうけど」と言ったら本当に持ってきた。航空会社に勤める二人の女子の話で、四百字詰め原稿用紙に四枚ほど。まあやっぱり小学生が書いたものなので、話の大半が幼稚園の頃の話と今いる小学校での話、そして最後のほうで「二人は同じ航空会社に入社したのです」みたいなことが書いてあった。微笑ましい小説もどき。だがそんな原稿を前に、自分のバカスイッチが入ってしまった。

仕事の時と同じように訳してみた。もちろんそれなりに時間はかかる。しかも無報酬のタダ働き。「ちょっと時間かかるけどね」と最初に断っておいて、小学生の文章をじっくり、きっちりと英語に訳してみた。そしてワードアートやフォントを駆使して、ちょっとおしゃれな感じの英訳小説が出来上がり、二部印刷。先週の授業の時に渡された「原作者」さんは、相当喜んでいたとのこと。それを教材として使ってもいるらしい。訳者としては「嬉しい」という言葉による対価を得たわけだけど、少しでもその子が英語に興味を、果ては翻訳とかに興味を持ってくれるとなおのこと嬉しくなる。結構無報酬の仕事(というか仕事に関わる料金の発生しない雑用)には関わってきてるけど、今回のはすごい面白かったし逆にためにもなった。子供の書く文章を英文に訳すという経験ができたからだ。この世界、何が何時、どの仕事の参考になるのかわからないのでこちらからもお礼を言いたい次第。

東京エスムジカ-月凪
http://youtu.be/SeIs2x2v4Ds

でだ。
「真面目に遊ぶ」=「バカをやる」っていう経験、実は高校の時にしていたのを思い出した。
高校二年と三年の時の担任は社会科(地理と倫理)を担当していて、免許は環境破壊になるから捨てた、というあごひげを生やした変わり者(俺らにとっては面白い)の教師だったんだけどね。その頃PCというものがネットにダイヤルアップで繋がりだした時代で、自分も親にねだってノートPCを買ってもらった。すげえ値段するやつ。HDDが800MBでRAMが24MBでなんと25万。今考えたらもう骨董品である。OSはWindows95。それでやってたことは諜報ものの自作の小説を夜な夜な執筆して、学校のコンピュータ室のプリンターで印刷してクラスメートに読ませてたっていう、まあそれこそバカをやってた。まあこのバカがあったからタッチタイピングやPCの基礎、Windowsの基礎やら何やらっていうのが身についたという結果もあるんだけど、とにかくその頃は小説を書いて読ませるっていうのが自分の中で流行っていた。少数ではあったものの、読者もいたし。でそこに目をつけたうちの担任。

高校三年のある日担任に教室で、「お前さ、小説書いてるだろ?どうせなら、書いてるだけじゃなくて出版しちまおうぜ」と言われた。出版ってなんすかそれ。「学校の印刷室使って五十部刷って、一冊千円で売れば印刷代くらいはまかなえるし面白いじゃん」と。「ずっと面白い卒業記念になるしな」と。

というわけで、特に大学受験も考えてなくて暇を持て余してた夏休みは毎日のように学校へ行って担任と印刷作業に明け暮れた。後書きは、今でもtwitterで話したりする当時のクラスメート兼バカ仲間だった友人が書いてくれた。そして出来上がったスパイ小説。次々にクラスメートが持って行き(みんな千円くれた)、知らない奴らまで持って行ってくれた。読んだかは知らないけど。当時の校長先生も千円で買ってくれた。懐かしいあの卒業記念。「本気でバカをやる」とはどういうことかってのを教えてくれた当時の担任の石飛先生、感謝してます(マジで)。いつまでも「真面目に遊ぶ」=「バカをやる」っていう気持ちを忘れないようにします。はい。

五十部刷った自分の(今読めば出来損ないの)小説は、手元には一冊だけ残っていて、今も本棚に収まっている。
novel

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2 thoughts on “まじめに遊ぶ(今週の一曲)”

  1. よくぞそこまで。
    私が高校の時に書いてた中二全開のファンタジーなんていまだに大学ノートのまま本棚にありますw
    焼き直して綺麗にしようかと当時の相棒から引き取ったものの恥ずかしすぎて自分でも読み返せず。
    多分もうその子(今は声優)も忘れてるはず。

    Reply
    • >ふわもこさん
      ぜひそのファンタジー小説を公開しt(ry
      当時の相棒さん、今は声優されてるんですか。
      その小説とつながりが無いわけじゃなかったりして。

      Reply

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