本屋について

本屋が好きである。ふらっと入る街角の小さな古本屋。仕事で必要な資料的な書籍を狙って入る大型書店。いずれにしろ自分にとっての本屋とは、探検家にとっての洞窟、みたいなものなのである。

昨今はどんどん本屋が減っている。実に嘆かわしい事態ではあるが、その主な要因となっているオンライン系本屋もかなりの頻度で利用し、電子書籍も相当利用するので、「嘆かわしい」ということ自体が実はおこがましくもあったりする。

個人的には、やはりビル一棟がどどんと書店になっていて、各階が書籍の種類ごとに別れているタイプの大型書店が好みでして。一日をそこで過ごせる自信がある。 自分が住むあたりでは、この手の大型書店はやはり減ってしまった印象が強いが、それでも昔から頑張っている書店がいくつかあって、たまに行く。

そういった「大型書店に行く」場合は、ふらりと入るより、何か具体的なものが欲しいといったときに行くことが圧倒的に多い。例えば仕事の資料系。自分は英語屋なので、英語関係の本を中心にチェックしたりするが、プロジェクトによっては専門的な洋書が必要な場合というのが多々発生する。例えば、原子力発電所の配管内における流動現象について、みたいな内容の場合、まずは「発電とは?」的な部分から調べ物をスタートさせて、ある程度の目星をつけたら次は「発電の種類」、「発電所の種類」そして「原子力発電とは」的な部分に矛先を準に差し向ける一方で、「流体力学」、「配管の仕組み」、「流動とは」、「流動現象とは」などのキーワードでいろいろ情報をあたってみる。そうした調べ物を経ると、最終的に読みたい書籍がちょこちょこ出てきたりするので、それをAmazonで調べるとまあ大抵Amazonには売ってるんですけど、やはり中身を見たい。となると大型書店でチェックしよう!という流れになる。これが仕事で必要になった場合の書店チェックである。この場合は、基本的には自分の望む書籍にプライオリティが設定されていて必要に駆られて書店へ行くので、楽しいとか感じる前に、ピンポイントで目指す内容のものがあったりするととても助かる。

一方で、自分の好きな書店の行き方は、何も考えないでふらっと入り、気の向くまま様々なフロアを巡り巡っていくという方法。時間が限られている場合にはあまり取れない方法ではあるが、時間があるときにやるととても良い時間が過ごせる。下手なカフェに行くよりずっと良いので大変おすすめ。

方法は簡単。何も考えずに大型書店に突入してただぶらつくだけである。新刊の棚で適当に流行りの本にツッコミを入れて回ってもいいし、文庫フロアで好みの作家の読んでいないストーリーのさわりをチェックしてもいいし、実用書で自己啓発書にまみれてもいいし、新書で信憑性の低そうなB級本を手にとってもいいし、バーベキューや釣りの雑誌を眺めつつ、辞書を徹底比較してもいいし。とにかく何をやっても自由な大型書店というのは大変に素晴らしいアトラクションなのである。

本屋にいると、いろいろと脳が活性化されていく気がする。入店最初は、こないだまでAmazonで気になってたあの本のタイトル、この本の題名がとにかく出てこない。この現象は実に不思議で、自分だけなのかもしれないが、個人的には「書籍タイトル健忘症」と名付けている。たぶん、本の洪水状態の大型書店フロアに進入していくと、一時的に興奮状態に陥ってしまい、暫くの間何かを冷静に考えられる状態ではいられなくなってしまうのだろう。そうなるともうどうでもよくなってとにかく目についた本をいろいろ開いているのだが、そうやっているとたいてい「あ、あのタイトル思い出した」という瞬間が訪れる。そうやっていろいろと本から本へ渡り歩いていくのだけど、実はそうやっているときに途中で見つける本がなかなか侮れなかったりするのである。それを個人的には「書店におけるセレンディピティ」と呼んでいる(いない)。そしてそれがまた仕事関係でもそうでなくても同確率で発生するのである。こんな面白い現象が発生するのも、大型書店ならではなのである。そして個人的にこの「書店におけるセレンディピティ」が発生する確率が高い書店が、紀伊國屋書店、有隣堂書店、(代官山とか辻堂のでっかいほうの)蔦屋書店である。そりゃ東京や横浜、大阪や札幌などといった大都市にはもっともっと魅力的な「趣味追求型書店」のようなものもあるかもしれないけど、個人的にはこの体験がしたいのでざっくばらんにいろいろ置いてある大型書店へと向かうのである。

また行きましょう。

Hatena Bookmark - 本屋について
Pocket
LINEで送る

2 thoughts on “本屋について”

  1. こんにちは。「書店におけるセレンディピティ」、私もよくやります笑。昨年日本に一時帰省したら、一目散に一人で大型書店に駆け込みました。もうこれは、同じ感覚を持った人でないと、この興奮状態というのがどういう状態なのか、わかりませんね。説明しても通じない人はいる(わが夫とか。本は好きなのだが、書店に入って興奮状態というのがわからないらしいです)。
    在住国だと、大型書店は1店舗しかなくて、街の中心地に行くと古本屋があります。でもそこでこの「書店におけるセレンディピティ」にはなりません。大型書店もなんとなくそれらしき状態にはなりますが、やはり日本の大型書店には敵いません。
    ということで、書店に入ったときの興奮状態について、共有できる方がいらっしゃったので、思わずコメントしてしまいました。では。

    Reply
    • コメントありがとうございます!
      いささかマイナーなことを書いてるなとは自分でも思ってはいたのですが、それがわかる方がいらっしゃるとは…!
      感激しております。そうそう、これってどこでも発生する訳じゃないんですよね、それと自分と相性の良い書店というよりは、初めて入る大型書店で起きる確率が高い気もします。

      いずれにしろ、共有できてよかったです、これからもTwitterでよろしくどうぞ。

      Reply

Leave a Reply to jiwaroin(twitter) Cancel reply

This site uses Akismet to reduce spam. Learn how your comment data is processed.